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タクヤの備忘録です。
目次
土の中の小さな宇宙。
畑や庭、プランター、公園や森、山など至る所に「植物」と「土」が存在している。
今回は
《 土に生きる小さき者たちと、植物》について調べてみました。
土の中では目に見えない膨大な生き物たちが動き回っている。
細菌、糸状菌、放線菌、ミミズ、ダンゴムシ、線虫…。こうした存在は、ただの脇役ではなくて、植物が育つための舞台を作る「主役」でもある。
この記事では、土の種類・微生物・小動物たちの役割、そして連作障害や輪作といった農の知恵に触れながら、土壌フードウェブの奥深さを見ていく。
1. 土は1000年かけて育つ ― 世界土壌型12種と日本の特徴
土は微生物と植物が100~1000年かけて耕したもの。
その中から鉱物を抽出し金属にしている。
人間はそれを消耗し続けている
土壌学者 藤井一至
《土壌》は、鉱物・有機物・微生物が何百年、何千年と積み重なってできた「生命の基盤」。
国際的には「世界土壌型12種」といって土は大きく12種に分類される。

- 泥炭土(Histosols)
- ポドゾル(Podzols)
- チェルノーゼム(Chernozems/黒土)
- 永久凍土(Cryosols/Permafrost soils)
- 褐色森林土(Brown forest soils/Cambisols系)
- 強風化赤黄色土(Ferralsols/ラテライト)
- 黒ボク土(Andosols/火山灰土)
- 粘土集積土壌(Luvisols)
- ひび割れ粘土質土(Vertisols)
- 未熟土(Regosols)
- 砂漠土(Aridisols)
- フェラルソル(Ferralsols/ラソル)
その中で日本の土壌は3種類
《黒ボク土、褐色森林土、未熟土》
日本の国土の約30%を占めるのが
「黒ボク土(火山灰土壌)」で、これは世界全体では陸地のわずか0.8%ほどしか存在しない。ニュージーランドやジャワ島など、限られた火山地域でしか見られない。
《黒ボク土》は有機物をため込みやすく、微生物の多様性が非常に豊か。ただし酸性に傾きやすいため、石灰や堆肥を入れて調整する必要がある。
《褐色森林土》はやや痩せて酸性気味なのだが、マメ科植物と相性が良い。
《未熟土》もしくは沖積土は川の堆積でできた若い土で、水はけと肥沃さのバランスが特徴。
2. 土壌微生物の三つの顔 ― 腐生菌・共生菌・病原菌
土壌には無数の微生物が棲んでいる。生物学的には大きく以下の3つに分けられる。
- 腐生菌:枯れた植物や落ち葉を分解し、腐植を作る。
- 共生菌:根粒菌や菌根菌など、植物の根と共生して栄養をやり取りする。
- 病原菌:植物を枯らす原因になる病気を引き起こす。
さらに分類を広げると、
- 糸状菌(75%を占める。カビやキノコの仲間。分解・共生・病原の三役を担う)
- 細菌(20%。窒素循環や分解の中心)
- 放線菌(5%。抗生物質を生み出し、病原菌を抑える役割も大きい)
こうしたバランスの上に、植物は根を伸ばし、栄養を吸収している。
3. 連作障害 ― 微生物バランスの崩れが招く病
同じ作物を同じ畑で作り続けると「連作障害」が起きる。
連作障害
同じ作物の種類や科の植物を同じ場所で続けて栽培することで、病害虫の発生増加、土壌養分の偏り、土壌環境の悪化などが原因で、作物の生育が悪くなったり枯れたりする現象です。
これは栄養の偏りだけやなく、微生物の勢力図が一方向に傾いてしまうことが大きな原因や。
たとえばトマトやキュウリを連作すると、根の周りの病原菌や植物寄生性線虫が増えてしまい、植物が病気に弱くなる。
さらに一部の植物は「アレロパシー」と呼ばれる現象を起こし、自分の生育に有利な化学物質を根から出して土壌環境を変えてしまうこともある。
アレロパシー
植物が出す化学物質が、周りの植物の発芽や成長に影響を与える現象。
✔ 周りの植物の成長を抑える(例:クルミの木の根や葉から出る物質が、下草を生えにくくする)
✔ 逆に特定の植物同士で成長を助け合うケースもある
つまり「植物同士の化学的な牽制やサポート」の仕組み
これを避ける知恵が「輪作」。
異なる科の植物を順番に植えることで、微生物の多様性を維持し、病原菌や害虫を抑える。
輪作(りんさく)
同じ畑で同じ時期に異なる種類の作物や科の違う作物を、年ごとに順番に栽培する農業技術。

4. 土壌フードウェブ ― 微生物からミミズまでつながる生態系
土の世界は微生物だけではない。そこには小さな動物たちが関わる「土壌フードウェブ(食物網)」が存在している。
- ミミズ:落ち葉や有機物を食べ、糞で団粒構造を作る。土を耕す天然のトラクター。
- ダンゴムシ・ワラジムシ:枯れ草や落ち葉を細かく分解し、微生物が利用できる形に変える。
- トビムシ・ダニ類:菌糸や微生物を食べ、増えすぎを防ぎながらバランスをとる。
- 線虫:種類によっては作物を枯らすが、菌や細菌を食べる益虫タイプもいる。
こうした多層的な生き物の営みがあるからこそ、土はただの「分解の場」ではなく、ひとつの森のように循環し続ける。
5. 養分循環と肥沃な土づくり
微生物や土壌動物の働きは、植物が必要とする窒素・カリウム・リンといった養分循環に直結している。
堆肥を入れることで腐生菌やミミズが活性化し、輪作で微生物バランスを整えることで、病原菌の勢いも抑えられる。
つまり「土を耕す」というのは、スコップで掘ることではなくて、見えない生態系を育てること。
まとめ
土の中は、微生物・小動物・植物がつながる生命のネットワークで満ちている。
黒ボク土という日本特有の土壌は、この生態系をより豊かに育む舞台。
- 微生物の多様性を守ること
- ミミズやダンゴムシを味方につけること
- 輪作や堆肥で循環を回すこと
これらは昔からの農の知恵であり、最新のサイエンスにも裏づけられている。
土を理解することは、作物を育てること以上に「生態系を育てる」ことなのかもしれない。
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